Appleが、生成人工知能(AI)のトレーニング目的で、複数の大手メディア企業に総額5,000万ドル(約71億円)以上を支払う契約を提示していると報じられています。記事をAIに学習させるための契約を提示することを評価する企業がある一方、Appleの提示する条件に「生温かい」反応をする企業もあるようです。
■3行で分かる、この記事のポイント
1. AppleがAIのトレーニング目的で複数の大手メディア企業に契約を提示。
2. 提示している契約額は総額で約71億円以上とされる。
3. iOS18ではAIの進化によりSiriが機能向上との噂も。
AIの学習用コンテンツ利用契約を大手メディア企業に提示
The New York Timesの報道によると、Appleは記事のアーカイブをAIに読み込んで学習させる契約締結に向けて、複数の大手ニュースメディアと交渉しており、提示している契約額の総額は少なくとも5,000万ドルに達するとのことです。
Appleが複数年契約を提示して交渉しているメディア企業として、NBC News、Condé Nast(Vogue、Wired、Vanity Fair、Ars Technica、Glamour、The New Yorker、GQなどを発行)、 IAC(People、Martha Stewart Living、Entertainment Weeklyなどを発行)の名前が挙がっています。
Appleから条件提示された企業の反応は
Appleから交渉を持ちかけられたメディア企業の反応は、AIのトレーニングにコンテンツを無断で使用するのではなく、コンテンツの利用に対して許可を求めている姿勢を前向きに捉えている企業も多い一方で、Appleの提示する条件が広すぎるほか、Appleが生成AIをニュースにどう活用するのかを曖昧にしていることから、「生温かい」態度を示している、とThe New York Timesは伝えています。
AIのトレーニング目的での公開データ使用といえば、2023年7月はじめにX(旧Twitter)が、データを許可なく収集するスクレイピング行為への対抗措置として、厳しい閲覧制限を設けたことで多くのユーザーが影響を受けました。
iOS18でAIを活用との報道も
Appleは、業界に先駆けてパーソナルアシスタントのSiriを公開したものの、AI分野ではMicrosoft、Google、Amazonといったライバル企業に遅れをとっています。しかし、着々と開発は進めています。
Appleのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、AI開発のため大規模な投資をしていると認めています。「Apple GPT」と呼ばれる生成AIを社内業務に使用しているともBloombergが報じています。
iOS17に盛り込まれた多くの新機能にも、AIが貢献しており、Siriに呼びかける際に「ヘイ」が不要になったほか、命令文の認識に柔軟性が増すなどの改善が施されています。
iOS18では、Siriの機能が大幅に強化されるほか、Apple独自開発の生成AIが搭載される、とも伝えられています。
AppleのAI開発遅れはプライバシー重視が重荷?
AppleのAI開発が、GoogleやAmazonなどと比べて遅れている要因として、ユーザーのWeb閲覧履歴や行動履歴などの情報をユーザーの明示的な許可なしに使用しない、というプライバシー尊重の方針がある、と言われています。
先日、アメリカのマーケティング企業の、スマートスピーカーなどのデバイスからユーザーの日常会話を聞き取り、自動解析して広告表示に利用する「アクティブ・リスニング」と呼ばれる技術に対してAppleは「App Storeガイドラインに対する明確な違反だ」と猛批判しています。
Photo:Apple
(hato)
Source: iPhone Mania
Apple、AI強化の野望!メディアに71億円の巨額提示か