欧州連合(EU)の最高裁判所にあたる司法裁判所は、Appleのアイルランドとの税制優遇を違法とし、130億ユーロの支払いを命じました。欧州委員会の主張が全面的に認められ、10年にわたる法廷闘争が終結しました。
10年近くの泥沼裁判に幕
ルクセンブルクに位置する、EUの欧州司法裁判所は10日(現地時間)、Appleがアイルランドと特殊な取り決めを交わし節税していたのは違法だったとの判決を下し、同社に対して130億ユーロ(約2兆800億円)の支払いを命じました。
今回の判決は、欧州委員会が2016年に要求した追徴課税額とほぼ同額であり、10年近くの泥沼裁判にようやく幕が下ろされました。本来納めるはずだった130億ユーロをAppleはすでに口座へ納付しており、今回の判決を受け、アイルランドが追徴課税分として正式に回収することとなります。
実質税率を0.005%に抑える企業努力
もともと法人税率が12.5%とEU領域内でも低く抑えられていたアイルランドですが、Appleほどの超巨大企業が帳簿上の本社を現地に設け、世界各国から上げた収益分の税金を納めて国庫を潤してくれるとなれば、税率を個別で引き下げてほしいとの要望に応えたくなるのも納得でしょう。
こうしてアイルランド政府と秘密裏に交わした取り引きの結果、Appleは2014年、実質税率を0.005%にまで引き下げることに成功しています。
Appleは欧州委員会の主張に対し、法律に則って納税してきたと一貫して反論、ティム・クック最高責任者(CEO)も「政治的なたわ言」に過ぎないと批判してきました。その努力が実ってか、下級裁判所は2020年に欧州委員会の決定を無効としたものの、最高裁判所が今回下した結論は、下級審の判決を丸ごと覆す内容でした。
Appleが恐れるのは課税額ではなく新たな法律
Appleにとって、130億ユーロは半期分のMac売上に相当するとはいえ、痛くも痒くもない額のはずです。
むしろ彼らが本気で頭を悩ませているのは、App Storeを中核としたプラットフォームの寡占を厳しく取り締まる、デジタル市場法(DMA)の存在に違いありません。
先日の新作発表会でも改めて大きな注目を集めた、Appleの独自生成AI「Apple Intelligence」は、デジタル市場法に抵触する可能性があるため、EUでの実装が遅れることが明らかにされています。
Source:TIME
Source: iPhone Mania
Appleの税金回避に終止符〜EU最高裁判決で2兆円支払い決定