写真/渡辺 昌彦 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
人間は視覚情報が8割
正しい目線ワークが上達のカギだ
いよいよワインディング編です。安全確実なワインディングの走り方について解説していきましょう。今回のテーマは「目線の使い方」。ワインディングを走っていて皆さんどこを見たらいいのかお悩みの方も多いと思います。人間は情報の8割を視覚から得ていると言われています。つまり我々ライダーは目から入ってくる情報に全面的に頼りながらバイクを操っていることになります。ライディングにおいて視覚=目線の使い方がいかに大事かは言うまでもありません。
目線ワークの基本としてまず押さえたいのが「全体を見て点で捉える」です。“木を見て森を見ず”という諺がありますが目線もまさにそれ。1個の小さなことに固執してしまうと全体が見えなくなってしまいます。最初にコーナーを見渡して全体像をつかんだ上で、1つ1つのより重要なポイント、例えば路面の状態や対向車の有無、カーブミラーなどを素早くチェックしていきます。安全だと分かれば、次の情報を取りにいけばいいわけです。
2つめは 「遠くから近くの順で見る」。何故ならバイクは速いので、近くを見ていても数秒後にはそこを通過してしまいます。それでは意味がないので、なるべく遠くを見る。コーナーであれば先が見えなくなる限界まで目線を送ってから、走るべきライン上に沿って目線を引き寄せてくるようなイメージ。遠くから近くへ、遠くから近くへと目線を2~3回ほど往復させるうちにそのコーナーが終わるはずで、出口が見えたら次のコーナーへと目線を移していきます。これが実践できるとライン修正もしやすくなります。
3つめは「2~3秒先を見る」。何故かというと、安全運転の考え方の中では前車両との車間距離を2秒以上取ると追突事故の割合が減るというデータがあります。つまり2秒以上の時間的余裕があると人間は危険に対して反応しやすいということ。2秒は時間にすると短いですが、たとえば40km/hで走っていれば約22m、60km/hだと約33m進んでしまいます。速度によって進む距離は変わってくるので車間距離ではなく車間時間で管理したほうが確実で、その目安が2秒ということです。
そして4つ目は「顔ごと向ける」です。人間に目が2つあるのは正確に距離を測るためです。ただし顔の正面で見ないと正確な距離はつかめません。よく見る例として、顔は正面に向けたまま目玉だけ左右に動かしているライダーも多いようですが、これだと不十分です。先の情報や正確な距離をつかむためには、やはり顔ごとコーナーの先へと向けていくことが重要です。以上が目線ワークのポイント。詳しくは下記の解説をご覧ください。動画も合わせてチェックしていただくと動きのイメージが分かりやすいと思います。
これを見れば完璧!コーナリングの目線ワーク
Point1
「全体を見て点で捉える」
■広い視界の中でリスクを見抜く
視界の中でコーナー全体をまんべんなく捉えながら、1つ1つのポイントをチェック(コーナー先の対向車、路面状況や標識、道路脇のブラインドなど)しつつ、リスクを潰していくような目線の使い方を意識したい。
Point2
「遠くから近へ」
■遠近法でライン修正もしやすい
コーナーのできるだけ奥を最初に見て曲がり方をチェックし、そこから自分が通るべきラインに沿って目線を近づけてくるイメージ。「遠近法の目線ワーク」が使えるようになるとコーナリング中のライン修正もしやすい。
Point3
「2~3秒先を見る」
■危険回避のために必要な時間
危険に対応するには2秒以上の時間が必要。101(ひゃくいち)、102(ひゃくに)とゆっくり数えるとだいたい正確な2秒になる。試しにポイントを決めて自分がそこに到達するまでの時間を心の中で計ってみよう。
Point4
「顔ごと向ける」
■先の情報と正確な距離をつかむ
コーナーでは顔ごと向けて目線を送る。先の情報をいち早く得て、正確な距離をつかむためだ。ライダーを後ろから見ているとヘルメットが動いてない人が多い。目線が遅れると車体は起きてアウト側へと引っ張られる。
スマテク2.0 講師 プロフィール
Source: バイクブロス
今日から使えるライディングテクニック実践講座【最新版 スマテク2.0】6.ワインディング攻略(1)目線ワーク(動画あり)