「できるシリーズ」30周年おめでとうございます!
私は何をやっても続かない。「三日坊主」という言葉があるけれど、三日も続かないことも多く、子供の頃は「せめて三日坊主になりなさい」と情けない叱られ方をしていたものだ。そんな私が「いつまで続くかわかりません」とあらかじめお詫びしてから始めたのが音声配信。Voicyというプラットフォームでチャンネルを開設し、ほぼ毎日更新しながらあっという間に4年近くが経っている。今こうして書きながら自分でも驚いている。
田中さんのVoicy(編集部注)
「なぜVoicyは続けられるのか?」と考えてみると、「楽しいから」としか言いようがない。仕事もしているので、それなりに忙しい。人様に聞いていただくことを発信するのはある程度の手間もかかる。「それでも続いている理由は?」の答えは、いくら考えても「楽しいから」しか出てこないのである。
駆け出し通訳だった頃、アナウンス学校に通っていた。通訳はアナウンサーのように美しく話すことは求められていない。しかし、それにしても、私は滑舌が悪く地方出身者のため訛りもある。せめて耳障りでない話し方ができるようになりたかった。
アナウンサー志望の皆さんに混ざって訓練するも、「ド」がつく素人の私にうまくできるわけがない。やっても、やっても上達している気がしない。そんな自分にガッカリしながら、ある日先生に「全然できなくて落ち込んじゃうんです」とポロリと弱音を吐いた。
そのときに先生がおっしゃった言葉が忘れられない。「落ち込んじゃダメですよ。うまくなるには続けるしかない。続けるには楽しくないと無理なんです。思いつめないでやりなさい。」
それからは、「うまくなること」ではなく「楽しくできること」を考えながら聞きやすく話す練習を続けてみた。どれくらいうまくなったかはわからないけれど、通訳として働き続けていられるということは、聞いている方々が不快でない程度の喋りはできているということだ(と思う)。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉がある。好きだからこそ続けられるし、何ごとも続けていたら、それなりに上達するものなのだという、この言葉の意味を今さらながら噛み締める。そんなわけで、私は今日も音声配信を楽しんでいる。楽しいから続けている。続けた先に何があるのかはわからない。うまくなるためではなく、ただ楽しいから続けているのだ。
<!-- --> 田中慶子
愛知県出身。地元の県立高校を卒業後、劇団研究員、NPO活動を経てアメリカ最古の女子大であるマウント・ホリョーク大学を卒業(国際関係論専攻)。帰国後は衛星放送、外資系通信社、NPO勤務の後、フリーランスの同時通訳者に。天皇皇后両陛下、総理大臣、ダライ・ラマ、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、U2のBONO、オードリー・タン台湾デジタル担当大臣などの通訳を経験。2010年、コロンビア大学にてコーチングの資格を取得し、現在は通訳の経験をもとに、ポジティブ心理学なども取り入れたコミュニケーションのアドバイスをするコーチングの分野にも活動を広げている。2020年、慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科修了。デザイン思考を用いた英語学習法を研究。
主な「できる」シリーズの著書
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Source: できるネット
「好きこそものの上手なれ」〜続けることの意味【できる30周年コラム】